きりん舎では今回で3回目の登場となるやまなみ工房。2012年、2014年の展覧会から実に10年ぶりです。初日には、展示と合わせて楽しみとなっているピアノ演奏会では、多くの来訪者がゆっくり耳を傾けました。
展示の最初に目に入ってくるのは森田郷士さんの作品8点。全てのタイトルは「無題」で、ボールペンで波のようにうねる線をびっしりと描きこみ、ブロックごとちょうど人体の節や輪郭に肉が凝縮すまるように濃淡が表され、立体感が醸し出されます。線描の後ろに絵の具で着色された作品もあり、刺繍のような風合いもあってとりわけ魅力的でした。
KATSUさんの作品4点はそれぞれ「メトロポリス」「タワー」といったタイトルのとおり、都市の摩天楼や岩に張り付いた尖塔の建築を思い起こさせます。手で描いているのに、CGのポリゴンを見ているようなメッシュ模様が大変に精緻で立体物をなぞって膨張・縮小し、パース図のような遠近感があるように見えてしまいます。驚異的な空間認識能力です。
井村ももかさんの手芸作品は「水色の玉」「オレンジの玉」などの「玉」シリーズ6点です。丸い布の物体にたくさんのボタンが縫い付けられていますが、それぞれに色の縛りがあり、ボタンや縫い糸の色も同系色で工夫されています。驚くべきことに、これらはボタンを縫い付けた布を包み込み、それを何重にも繰り返して作られているとのことです。
川邊紘子さんの作品は女性とおしゃれを表現した作品10点。「足」シリーズは女性の服と靴の組み合わせをクローズアップ。「女の人」シリーズは、民族いろいろ、モダンファッションあり、歴史装束ありさまざまな姿に扮した女性たちとそのファッションをコラージュのように散りばめています。圧倒的なデザイン処理が軽やかで、蠱惑的な画面です。
栗田淳一さんは「無題」5点と、「手を取り合って、助けられて」1点。人物、顔、目、といったモチーフ、文字や何かしら生れつづける模様パターン、これらが繰り返され、呪術的な様相を帯びています。立体と平面を行き来する作品もあり、一つ一つ丁寧に仕上げる鍛錬された造形力に圧倒されます。
11月23日のきりん舎ギャラリーピアノをお楽しみください