きりん舎のアトリエとして活動を続けている「アトリエにしまち通り」の作品発表会「ハレの日」。今年で第3回目を迎えました。近江おごとハーブガーデンの山本真理さんに調合してもらった夏の香りアロマオイルでお出迎えします。
にしまち通りの作品は、8名の参加者から2~7点ずつ出展。それぞれの興味の赴くまま描かれた作品は画題が多岐にわたり、個性がいよいよ明確になってきました。
きりん舎理事2名も真剣に作品制作。それぞれの石や照明といった得意分野を生かしたインスタレーションを並べました。
障害者支援施設いこいの村栗の木寮とまいづる福祉会マグ・la・カフェゆるりからも同時出展いただき、恒例の松浦つかさ氏(造形作家)、鈴木隆氏(陶芸家)にも応援・協力作家として出展していただきました。 この機会に合わせてアトリエにしまち通りの作品集が完成しました。今回の展示にない作品も掲載しており、ギャラリーで閲覧可能ですのでぜひご笑覧ください。
玄関から階段の間にかけて並ぶのはアトリエにしまち通り8名の作品です。
四方美紀子さんは「モダンな樹」「緑もゆるやま」ほか3点。いずれも幻想と自然の交差する風景といえば良いでしょうか。「スーパームーン」は、朱色の背景に、黄色と補色的な紫をぶつけた1点。鉱物の結晶のような強い明るさが美しい作品です。そのほかの作品でも、水彩とクレヨンを効果的に使い、さやけき光と強い生命力が見事に表現されています。
柴山薫奈さんは「無題」2点、「アヤバス」ほか合計5点。猫がこちらをうかがう「猫シリーズ」は、猫と猫を見る人間との警戒感と人懐こさがないまぜになった絶妙な距離感をうかがわせます。水色と白の陰影の重なりが美しい「無題」も魅力的です。対象への乾いた関わり方が好ましく、気負いのない自立する心が示されているように感じました。
ケンタロウさんからは、「フクロウのなかま」「ペンギンの仲間」「アカショウビン」など、動物図鑑を参考に描いたもの合計7点集まっています。一つ一つの画用紙は小さめですが、動物への興味にあふれ、すばやく形をとらえる目と手の連携が見事です。淡々と描く中にひょうきんな雰囲気があり、「カラス」の作品では枯れた味わいも加わっています。
和泉早耶香さんは無題の3点。具象でなくチェック模様や虹のようなストライプといった幾何学パターンを取り入れた構成が目を引きます。空と雲と緑の野原を描いたと思える作品では、雲とみえるものを水色で表現したり、植物らしきものは雲のような形をしていたり、抜かれた白地も大きな白雲か山のようでもあったりと、多面的な見え方で魅力的です。
堀川遥香さんは海辺や野山の憧れの風景を描く無題の3点。一面に広がる丘から山に向かってを駆けていく子供らしき人を描いた絵は大きな景色をやや上空から俯瞰的にとらえています。対角線上に配置された人から山へ視線を誘導し、同時に空撮カメラ的視点でやや右の上手から人を追っかけるようにとらえていて想像力が刺激されます。
KOICHIさんの興味は戦隊ヒーローもの。かっこいいヒーローの立ち姿を色鉛筆で描き、その名前を書き添えています。細かく特徴を伝えるわけではありませんが、全体の雰囲気や手足に備わる攻撃特徴などを大づかみにとらえているようです。勢いよく塗り重ねた色鉛筆は色合いもきれいで、思い入れの強さが伝わります。
特撮やアニメへの愛があふれるharuo Agathaさんの作品は2点。今回はゴジラを描いた鉛筆画です。絵の横に映画のタイトルやキャッチコピーのようなものを書き入れていますが、これらは彼の撮影したゴジラフィギアの写真集と大いに関係あるとのこと。彼がストーリーを設定してシーンとして撮りためた写真にポスターイメージとして描いています。
走るのが仕事の働く車を何度も描く清水壮さんの作品4点。消防車やSL機関車を画面いっぱいに描き勢いよくほどばしるクレヨンが疾走感をかきたてます。今回は従来の絵に言葉も加わり、メッセージを放ってます。歌詞なのか、オリジナルの言葉なのか詳細不明ですが、これらの言葉も繰り返されながら車のエンジンに似た力強い高まりを感じさせます。
栗の木寮は2回目の出展ですが、きりん舎では初めてとなるS.N.さん、岩木孝子さん、内田靖さんの絵画と立体家模型の合計5点が並びました。S.N.さんは世界旅行や飛行機を題材に闊達でユーモラスな作品。「戦闘機のゆいどん」はタコのような鬼のような操縦者のデフォルメが利いていています。どちらも心が浮き立つ作品でした。岩木さんは「ミッキーマウス」など大好きなキャラクターを題材に画面いっぱいに描き散らしています。楽しげな様子がよく伝わります。内田さんは「いこいの村 栗の木寮」の建物を立体模型で表現。1階2階まで木工で見事に表現しています。
マグ・la・カフェゆるりさんは今回初登場ですが、田原道夫さん、米村勲さん、徳尾隼締さん3名が1~2点ずつ出展しました。「自衛艦」を出品した田原さんは「アンパンマン」では線を重ねて不思議な人の顔を描きました。米村さんは「ゾウさん」をのびのびと表現。徳尾さんは紫色を基調とした色調で塗りのパターンを組み合わせ、楕円状の「自画像」を描いています。
前回、一本の木から仏像の木を彫りあてていた松浦つかささんは、今回は人工素材の彫塑で「かばシリーズ」5点を展示しました。多少擬人化されたかばが大変ユーモラスです。鈴木隆さんは2点を展示。埴輪のような形態を素朴な風合いで表現した「馬の花入れ」、人の顔を単純化した線と面で表現した「面」は優しく穏やかな顔をしています。
きりん舎理事2名も作品展示でギャラリーを盛り上げました。日根伸夫氏は専門分野の照明から発送した動くインスタレーション作品。塩見篤史氏は造園家として続けているデスクトップガーデンシリーズの最新作「雷神」で地元産の石の魅力を表現しました。