6/26~ 7/4 ハレの日 第4歩 ~アトリエにしまち通りと仲間達~

きりん舎で創作活動を続けている「アトリエにしまち通り」の作品発表会「ハレの日」は第4回目を迎え、今年もいろんな作品が展示されました。

ろう画家三原巌さん、障害者支援施設いこいの村栗の木寮やまいづる福祉会マグ・la・カフェゆるりの仲間、きりん舎理事の日根伸夫さんと塩見節代さん、ぎりん舎オーナー塩見さん友人の今井忠夫さんらの作品も加わり、和やかで雰囲気の良い展示になっています。

恒例の近江おごとハーブガーデンの山本真理さんが調合したアロマオイルも心地よく、梅雨のひとときをさわやかにしてくれます。

また、今年は電子ピアノが新機軸としてきりん舎に登場しました。きりん舎の活動計画の一環で今後 音楽活動も準備中です。以前からボランティアとしてもアトリエにしまち通りに携わっていただいている前田さんのピアノ演奏が会期中にお目見えするかもしれません。
ギャラリーのピアノは、どなたでも弾いていただくことができます。音とともに楽しむきりん舎の今後の展開をどうぞご期待ください。

玄関の間から、通路の間にかけてはアトリエにしまち通りの展示。

四方美紀子さんの2点。いつものことながら幾何学的なパターンで分割する画面が巧みです。太陽のような赤い花のような形が二つ画面いっぱいに広がる絵、どちらも四方さんの内にある強い力が画面に開花しています。少女の絵は左右を対比的に描いた跡が見られ、何かのコンセプトがあるようです。

ケンタロウさんの7点。動物をモチーフにした絵が多いケンタロウさんですが、最近は太い筆でデフォルメも臆せず仕上げています。思い切りの良さで筆を走らせています。

柴山薫奈さんの4点は、題材はバラバラですが、柴山さんの世界を垣間見せてくれます。ハチワレの猫の絵は以前も何度か見かけたことのあるモチーフ。自分の家の猫を描いているそうで、少しすねたような表情が愛らしいです。またシャボン玉を描いた絵は空の色にうきあがるシャボン玉のにじみはかなく美しいです。

堀川遥香さんの作品は4点。はじめて大判画用紙で描いた月夜とウサギの絵は地面の下から上を見上げるアングルと周囲の地形を井戸のように囲っている構成で驚かされます。夜の野をかけるウサギ2匹と澄んだ夜空に浮かぶ月に住む1匹が呼応するすてきな世界です。そのほかの作品もクレパスを色濃く塗り、画面と向き合う時間を楽しんでいる様子が伝わります。

和泉早耶香さんの作品2点は、かわいらしいキャラクターやサクラのようなピンクの花をいっぱいにあしらったもの。かわいいものへの愛情や優しい気持ちがこもっています。

KOICHIさんの11点は主に戦隊ヒーローものがモチーフでしょうか。いろいろヒーローの装備などが列挙されています。色ごとに違う装備があるみたいで、それを一つ一つそろえるように描くのがコレクションみたいで楽しいのではないでしょうか。

大内巡さんの2点は今回初めて拝見する作品。聞けば自宅で描いていらっしゃるようです。画面にたくさん、たくさん描いた小さな家々。町というべきでしょうか。各家を電線のようなもので結ばれています。それらアンテナや送電柱をつないでいます。時折描かれている道路標識のようなものも、町から町へと画面を超えて広がっていくようで張り巡らされたネットワーク世界がどう続くのか興味深い絵になりました。

Haruo Agatha さんは名探偵コナンの映画新作をモチーフにした1点。鉛筆の線描でもかなり正確に描いています。一定の筆圧を保って、細部もしっかり再現していて、ゆるぎない表現力がうかがわれます。

合いの間のコーナーでは、照明デザイナーの日根伸夫さんの作品2点。視覚の もたらす光と色の発見を表現する作品で示唆に満ちています。円窓の中に照らされたガラスの管状の突起…もしかして、世間をにぎわしているコロナウィルスをかたどっている?かどうかはわかりませんが虹色に変化する光の美しい作品。もう一点は偏光フィルターの眼鏡をかけて遊ぶ楽しい作品。

奥の間では栗の木寮の3人

寺岡義雄さん「思うがまま」「寺文字」。闊達な筆致で色の変化や筆の跡を存分に楽しんでおられる様子がうかがわれます。「寺文字」は一見してアルファベットかなと思いましたが、やはりオリジナルのようで、まさに寺岡さんの文字だということでしょう。

櫻井三郎さん「セイウチ」。赤やオレンジを基調に青、緑、黒などのアクセントが効いた作品です。外枠を四角く囲い込み、中央に動物がよこたえられています。確かに牙やひれ足のようなものが描かれていますがむしろオリジナルな存在にも見えます。

内田靖さん「富士」「滝」。画材にカラーの砂を使った独自の作品。少しきらきら光っている砂が石英のようできれいです。「富士山」はたなびく緑の野にそびえる山、空に雲がうずまき躍動感が楽しめます。

マグ・la・カフェゆるりから3作品

志賀登麿さん「水槽車」は消防車や救急車など、働く車のコレクション。ときおり四角い色のパレットもグリッド状に配置され、リズミカルな作品です。

米村勲さん「惑星」は誰にもまねできない不思議な造形です。色も淡いですがオレンジ色の基調として青色やさまざまな色が差しはさまれ、ほのかな明るさが感じられます。

きりん舎理事の塩見節代さん「べしみ」は、ブドウの1粒が大きくなったような丸みのあるフォルムに土色の釉薬がかかり大らかな落ち着いた たたずまいです。タイトルの意味は鬼神をかたどった能面を指す言葉からということです。一文字に結ばんとする口の様子は「べしみ」かもしれません。

今井忠夫さんは木口木版の刷り上がり作品と木版をセットで展示。木版や輪切りの木にリトグラフ用の彫り道具で施した極細の線刻、面の墨色と彫り跡を埋めるチョークの白分かたれたモノクローム画面。影の世界がもたらす余韻が心地よいです。

階段から2階にかけては三原巌さんの作品9点が並びます。大阪市出身の三原さんは現在いこいの村・梅の木寮に暮らし、戦前~戦後の体験を描きました。

「S20.3.13 未明」というキャプションで始まる絵が2点。このとき、大阪はB-29の襲撃をうけ、焼夷弾により街ごと丸焼けになりました。その時の燃えさかる夜の街、焼きだされた跡の街を克明に描いています。ろう者の三原さんは目で見たことを記憶することに長けており、一つ一つのものにピントが当たっているような描出で、自身の体験を伝えます。戦前のまだ平和で満ち足りた暮らし、凄惨な戦時中の光景、戦後の復興を、日本の歴史と自身の時間を如実に記録し重ね合わせられています。

第4歩目となるアトリエにしまち通りの展覧会。一人一人の表現も深まり、かついろんな活動がますます楽しみになってきました。