7月19日~8月3日 YELLOW作品展 浮遊する色彩

今回のきりん舎は、大阪府泉佐野市の「YELLOW」から、独自の個性からなる8人29点の絵画を紹介します。色とりどり思い思いの線を描きながら、それぞれの好みやこだわりをうかがわせる幻想やユーモア。YELLOWから何人かのメンバーの来訪もあり、彼らの作品をモチーフにした絵はがき、Tシャツなどオリジナルグッズは訪れる人たちに好評で、みなそれぞれ観賞を楽しみました。YELLOW公式ページ(http://www.yellow.ne.jp/)

DSC_0857_キリン舎に入った正面に展示されているのは平野 喜靖さんの作品。モチーフのデフォルメが造形的な効果をあげています。幾何学的なパターンの背景に力強い造形からなる大胆な画面構成。よく見ればマーカーを自在に使いこなし、緻密なタッチを繰り返して完成にたどりついていることがわかります。

 

 

IMG_1808_続く穴瀬 生司さんの作品は、まず殴り書きのようなマーカーの線に目が行きます。画用紙とマーカーの接点から線となる動きに作者は集中しているでしょうか。それらの線が集まり、離れていき、やがて遠くから見ると色の洪水に漂うような感覚が生まれます。

 

 

DSC_0876_YOUさんの作品は美味しそうな食べ物や、かっこいい自動車とそれに合わせて考案した若い男性キャラクターたち。描線に迷いがなく、色使いもポップで快活な魅力を感じました。確かな観察を明確に表現する中にユーモアセンスもうかがわせます。

 

 

DSC_0862_1階奥に展示された有田京子さんの作品は、点描を描きいれたパターンをパッチ―ワークのようにつないで作る画面。力のある画面構成と色に対する驚くべき鋭敏な感覚が備わっています。落ち着きと優しさが感じられる絵から、心地よい風景が広がります。

 

 

DSC_0873_続いて階段を上がると、大輔さんの作品。温度計、計算機、ものを測る道具や尺度、数字の形象を端正に並べて構成した画面はそれ自体が精巧な機械のようでもあり、数字の世界に形態的な美しさを見出す個性がとても魅力的です。

 

 

IMG_1792_古谷 吉倫さんの作品は、建物、人物、動物、乗り物、小さく記号のように並べられています。繊細な輪郭線の美しさ、巧みな色使い、楽しい画面展開、といった要素が心地よく絡み合い、そこに現れる微かな地域性から空想の世界へと誘います。

 

 

IMG_1791_植田 大智さんの作品は、次から次へと湧き上がる不規則な色・形が生成され、うねって流れるようです。具体的にモチーフが推測できそうなものと、見たこともないようなモノが自在に融合し、見るものの心がざわめきます。

 

 

IMG_1790_今回の展示で二つの方向性を示した上田 匡志さん。「雪の女王」のように青い夜と雪の白が幻想的なおとぎ話の世界と、最近凝っているというスポーツ競技の機能的な形態を再構成した対比的な作品は、甲乙つけがたい魅力があります。匡志さんとご両親の昌史さん、益見さんにお話を聞くことができました。

上田 匡志さんはYELLOWに入所して5年目。小学生の頃は筆圧が弱かったのですが、仮名の書き方を練習しているうちに力強い線が描けるようになり、やがて中学生になると本格的に絵を始めました。目で見た記憶をもとに描きあげる匡志さんの絵はご両親が愛情を込めて「野望」と名付けており、欲しいものや行きたいところを表現していると言います。大好きなおとぎ話の国や、かっこいい乗り物、それらの野望を貯金の目標にして頑張り、家族旅行を楽しんでいます。先日は千葉にある懸垂型のモノレールにも乗りに行き、今度はサンリオビューロランドへ行くのが目標だとか。アトリエのある作業所が少ない中、YELLOWまでは自力で往復して通っていますが、ここにいると他の人の描画からも良い刺激を受け、楽しんで絵を描いているとのことです。

8人もの作者を一挙に紹介したYELLOW作品展。8月3日(日)まで展示中です。それぞれの個性と夢に彩られた浮遊する色彩を感じ取ってもらいたいと思います。