5月31日、4人の運営委員で神戸市の片山工房をお訪ねしました。力作ぞろいで興味深い作品拝見し、展示会への出品をお願いしたところ、責任者の方に快諾していただきました。秋の展示会をご期待ください。
塩見
芽吹いたばかり緑、桜やコブシの花がふわり。そんな春の訪れとともにきりん舎の展示「アールブリュットは今 part Ⅲ さまざまな形 それぞれの表現」が始まりました。
今回はやまなみ工房から岡元俊雄さん、河合由美子さん、清水千秋さん、そして個人で活動している茨木朝日(あさか)さんの4人です。いずれも力強く存在感を放ちながら、それぞれのこだわりや気質を感じさせる作品群です。
岡元さんの作品は、絵と陶オブジェ。絵は墨の描線が白い画面を太く細く走り、モチーフに新たな生命を与えます。陶オブジェは、絵にも描いているところから、ある種のこだわりを感じさせる「トラック」を立体的に再現していて、ユーモラスな仕上がり。
清水さんは、有名絵画のほか、水着姿の女性や祭の光景など、題材選びのセンスがユニーク。時に長く、時に短く繰り出されるチェーンステッチで平面的に画面を構成して見ている人を不思議な世界に誘います。
河合さんは、刺繍糸を丸く刺していって、ぐるぐると布を巻き込んでいきます。カラフルな糸を何度も縫い込む作業は製作日数も長くかかるとのこと。差し出された作品は立体となり、布の皺も表現に取り込まれます。
取材当日、茨木朝日さんがきりん舎を訪ねてくださいました。ギャラリーに到着してまず、きりん舎主宰の塩見を早速スケッチ。一旦絵を描き始めてノってくるとその場を離れなくなるという朝日さん。ものの5分で描きあげました。
朝日さんの展示は色鮮やかな着彩に時折スパンコールや糸などを貼った楽しい作品群。絵の題材はさまざまですが、家のインテリアやかわいい動物が出てくるかと思うと、イモリやカエルなどの水生生物も生き生きと描かれています。
実は、朝日さんのお父さん・茨木隆宏さんは、オオサンショウウオ研究者と縁があり、ご自身も大変詳しいそう。話題が京都水族館の話になると、朝日さんも加わって、展示されているオオサンショウウオが集団でぐでんと横たわっていた話を楽しそうに話してくれました。
「大きな羽根を広げる」という作品では、空飛ぶ鳥が風景とともに描かれています。画面の右上には、緑色に白いとんがりの「富士山」。お母さんと富士山の話をしていて、朝日さんが絵に描き入れたということです。富士山の見える山梨には、ご家族で里帰りすることもあるそうで、お気に入りは吉田の元祖キャベツ入り「白須うどん」だとか。朝日さんの描く絵は、そんな楽しい経験も再構成されているのかもしれません。
「夢中になって描いている朝日の姿が好きで。」そうおっしゃるお母さんの茨木やよいさんは、但馬ボーダレスアート実行委員会代表として「がっせぇアート展」を運営されています。但馬地域のアールブリュットが一斉に集まる年に一度の催し、手作りのアート展はとても楽しそうです(「がっせぇアート 」“第4回がっせぇアート展 無事終了しました” http://artles.exblog.jp/20774784/ 参照)。5回目にあたる今年は11月9日より開催予定です。きりん舎からも、ぜひ伺いたいと思います。
ギャラリーきりん舎、春の展覧会のお知らせです。
期間: 4月19日(土曜)〜5月3日(土曜)
出展作者
fromやまなみ工房
from兵庫
写真はやまなみ工房のアトリエとギャラリーです。
きりん舎 2013年冬の展示「みずのき作品展」。
展示作品の作者の一人、岩本勇さんが訪れ、お話を聞くことができました。
岩本勇さんの談話
「16歳の時から絵を描き始めました。みずのき松花苑で西垣籌一先生が教えてくださるようになってから、現在で30年ほどになります。先生は自由に描かせてくれて、おもしろい絵を描きなさい、ちゃんと見て描きなさい、と教えてくれました。」
「ふくろうの森の絵は、絵から木が飛び出すようにと思って描いています。枝ぶりや立体感の表現に気を遣いました。仕上げるのに3ヶ月ほどかかりました。」
「ステゴザウルスの絵は力強くリアルな足を描くのが難しかったです。絵の具の垂らし込みで皮膚の質感を出そうとしています。皮膚にはアンモナイトも描きこみました。おもしろい模様になったと思います。」
「恐竜のほかには、バルタン星人の絵を描いたこともあります。今度ウルトラマン対イグアノドンみたいなのを描いたらおもしろそうですね。」
岩本さんは、観賞者の方々とも歓談し、きりん舎での滞在を楽しんでいた様子です。
その他の絵も、色使いや形に現れた発想の飛躍や、表現力の強さ、画面構成の美しさがあり、それぞれに個性をもった絵は、鑑賞者を魅了しました。
きりん舎の中の様子。漆喰、木製スツール、和紙のパネル。落ち着いた雰囲気の中に、絵画を引き立てる空間になっています。次回の展示は3月中旬に、15日 間の予定で、やまなみ工房から岡元俊雄氏、河合由美子氏ほか、兵庫県養父市在住の茨木朝日氏の共同展を計画しています。どうぞお楽しみに。
きりん舎の2013年最後の展示は、京都府亀岡市にある「松花苑(しょうかえん)みずのき」の作品展になりました。みずのき、京都府、きりん舎による三者共催です。作品の選択と展示方法について、みずのきから提案を受け、きりん舎も刺激を受けました。
きりん舎代表・塩見と松花苑みずのきの出会いは、以前、松花苑グループの施設「かしのき」で行われていた園芸療法に塩見が庭師として手伝ったことがきっ かけです。いつか、みずのきの作品展をやりたいと企画を温め、作品が集まるのを待ちながら、きりん舎2年目にして5回目の作品展で登場となりました。満を 持してのお披露目に約150人の来訪者が観覧しました。
今回の展示は、木炭でカボチャを描く岡本由加、コヨーテの親子がユーモラスな小笹逸男、ステゴザウルスやフクロウの森の夜を描いた岩本勇、密度の濃いク レヨンで石を描く二井貞信、点描で大画面を埋めた福村惣太夫、家を題材に幾何学的に画面分割した堀田哲明、人の顔らしき再構成が不思議な山本一男など16 作品。着彩の道具も手法もさまざまでしたが、探求心、自由さ、独自の視点に圧倒的な力があります。
12月8日の最終日は作者の一人、岩本勇さんがきりん舎に遊びに来てくれました。「亀岡から時刻表を見ながら計画してきました。旅が好きで、このあいだは伊豆に行き、富士山を見ながら温泉に入ってきました。」そんな岩本さんに絵について聞いてみましょう。
(次回に続きます)